三共堤・丸田沢堤の自然
タチツボスミレ Viola grypoceras (スミレ科)
タチツボスミレ群生
春の可憐な花の1つである。散策路の道端にたくさん見ることができる。1株で咲いていることもあるが,多くはまとまって生育しているから,きっと兄弟・姉妹なのだ。それでも,皆違う方角を向いている。兄弟・姉妹でもそういうものだ。
タチツボスミレ花拡大
なかなか大写しで見る機会はない。距(キョ)が犬の尻尾に見える。スミレは振ってはくれないが。
タチツボスミレ花横顔
スミレは「距(キョ)」という花の後に角のような構造を持っている。バランスをとるためのようにしか思えないのだが,実際はどうなのだろう。なんでも理由を求めてはいけないのかもしれない。
タチツボスミレ群生の斜面
「スミレはただスミレのように咲けばよい」とは,数学者・岡潔の言葉であるが(春宵十話),スミレもスミレ以外の表現法を持たねばならないのだ。スミレが枯れたらどうなるか春の野に伝えることが必要である。春の野もまた,スミレが何かすぐに「貢献」してくれることを求めてはいけない。スミはそういう花なのだ。
タチツボスミレ
これは閉鎖花。開くことなく,中で自家受精して種子を作る。
タチツボスミレ
5月末,すっかりスミレのことを忘れてしまっていたが,スミレは「残業」をしていたみたいだ。咲かない花が「満開」の季節を迎えている。